都条例改悪
実質的な廃案に 言論弾圧に待った

 「改正」に名を借りて、労働組合運動や市民運動、さらに報道機関の取材までを取り締まりの対象にできる、東京都の「迷惑防止条例」改悪の委員会審議が6月21日に行われました。問題の「第五条の2」を削除(これに伴いその罰則を定めた第9条も)するという民主、自民、公明3党の修正案が採決され、次に原案の削除されない条項が採決され、ともに成立しました。
 争議団をはじめ自由法曹団などの団体は、委員会が行われる21日まで宣伝と要請をくり返しました。
 委員会後、秋田委員は「運動が実った、条例の毒素はとり除いた。かつて(案)が削除されたことはない。乱用されることのないように監視が必要だ」と傍聴者に語りました。


東京都の迷惑防止条例「改正」案は正当な抗議・要請や取材活動も禁止!

警視庁が6月都議会に提案
 警視庁は、6月11日開会の東京都議会に、迷惑防止条例の「改正」案を提出し、6月下旬には一気に成立させようとしています。しかし、この「改正」案は、「つきまとい」等から都民生活を防止するという美名を使って、労働組合運動、消費者運動、公害反対運動などの市民運動、そして報道機関の取材活動など社会的な活動を広く対象にしていて、それを警察の早期介入と刑事罰(最長2年の懲役)をもって禁止し、取り締まるという強権発動を認めるものとなっています。

要請・抗議はやむにやまれぬ行動
 労働組合や市民運動で行っている使用者や加害企業に対する要請行動・抗議行動などは、通信手段を使ったり、文書を送付したり、訪問したりして行なうのが日常のこととなっています。
また、報道機関(フリーを含む)も、社会的に注目される事例ほど通信・文書・訪問・待機などの行動を行ないながら、取材すべき相手方に対して国民の知る権利に役立つ取材をしているのが日常です。
 そして、これらの活動は、要請・抗議の相手方や取材の相手方が迷惑な思いをすることがあっても、労働組合の団体行動権、市民の言論表現の自由、国民の知る権利と報道の自由などの基本的人権が尊重されるべきものとして、当然に認められてきました。

相手方に「迷惑」のほとんどが対象に
 ところが、改悪案は、暴走族名の落書きやピンクビラの配布を禁止する条項と共に、「つきまとい」等と総称して、待ち伏せ、押しかけ、面会要求、電話ファックス、文書配付(送付・掲示も含む)などの行為も、相手方に迷惑であれば取り締まりの対象にしようとしています。
 取材のために待機すること、要請抗議、取材のために訪問すること、直接意思を伝えたり、取材をするために面会を求めること、要請抗議や取材のために電話ファックスすること、抗議のビラを配布することなど、日常の抗議要請行動、取材活動も相手方が迷惑だと感じれば(それが普通です)、取り締まりの対象にしようというのです。


ダメダメ そんな……
労働関係、公害・薬害・食品・銀行・悪徳商法・行政賠償を追求する行動や取材


ストーカー規制法と異なり、規制の対象は無制限
 既に国会で成立して施行されているストーカー規制法は、恋愛感情から生じた行為に限定したものでした。しかし、この改悪案は、こうした限定はせず、社会生活全般にわたって取締りを可能にしています。
 改悪案は、職場・学校・地域社会の関係から生じた行為、売買・雇用・貸借などの契約関係から生じた行為など様々な不法行為から生じた行為について、その全てを対象にしようというのです。労働関係はもちろん、公害・薬害・食品被害・銀行被害・悪徳商法・行政の賠償責任などを追及する行動も含まれ、取材活動も除かれているわけではありません。
 改悪案は、取り締まる対象行為として、「悪意の感情を充足する目的で」とか、「反復して」との表現を使っています。しかし、「悪意の感情」というあいまいな表現では、社会的不正に対する怒りや不満の感情を除外したことにもなりません。不正を糺す行動や取材は、それこそ反復されるのが通常ですから、何の限定にもなりません。

警察の早期介入で、基本的人権を侵害する
 改悪案では、社会的な行動や取材が、まず1回だけあっても、相手方が迷惑したと申告すれば、警察は直ちに活動できる権限を与えようとしています。2度目の行動や取材を待ち伏せて、証拠を確保し、同時に逮捕も出来るという仕組みです。労働運動、市民運動、報道活動について警察という権力が早期に介入し、活動を抑圧することができるのです。
 警察は、従来も法を悪用して国民の基本的人権を侵害してきました。道路交通法規を悪用して、路上のビラ配布者を逮捕したこともあります。警察の不祥事も後を断ちません。その警察に、こうした社会的行動全般と報道活動に介入する権限を与えることは、到底許されません。また、改悪案には、国民の基本的人権を尊重すべきという権限の乱用を防止する規定さえありません。
 条例案が社会的な行動であっても、相手方が迷惑する行為を広く禁止しようとするのは憲法違反です。また、ストーカー規制法の立法経過にも反していて、都の条例制定権を逸脱するものです。

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